国内外の事業を通じて
多角的にコメの魅力を発信し、
社会的使命を遂行します。

代表取締役社長執行役員

取締役会長

鎌田 慶彦

竹内 伸夫

Q. 2023年12月期の概況と国内での取り組みを お聞かせください。

■竹内 当社グループは主力である米穀事業を中心にさまざまな構造改革に取り組んでいます。会社全体での業務の合理化・効率化の面では、本牧工場を閉鎖して人員と生産機能を桶川工場に集約したほか、本社でも管理部門の一部業務を営業部門に組み込むなどの組織改革を推進し、順調に機能しています。また、米穀卸というビジネスでは仕入れと販売の適切なマッチングが重要です。以前より当社グループは、全農との協力体制の強化と仕入れルートの複線化を推進して安定的な調達と機動的な調達を両立し、需給環境の変化に柔軟に対応できる仕入体制を整備してきました。当期はこれらがうまくかみ合ったことで外食需要の回復などの好機に過不足なく対応でき、増収増益、過去最高益の達成という成果に結びついたと思います。
コメは相場の商品でもありますが、当社グループにとってコメは投機的取引ではなく、お客様のニーズにいかに応えられるかという視点で、必要な量だけを必要なだけ仕入れて、必要なお客様に販売することでシェアを守っていくもの、というのが基本的な考え方です。国内では人口減少等を背景にコメの消費量が年々減少している一方、特別栽培米や産地直送米といった付加価値のあるコメについてはニーズが高まっています。そうしたニーズを確実に汲み取ってシェアを拡大していくことで、国内市場での安定的な成長を目指しています。

Q. 成長市場である海外での取り組みについて お聞かせください。

■鎌田 当社グループは1991年から海外事業を展開しており、近年は輸出需要の増えている日本米(ジャポニカ米)の販路拡大に向けた仕組みづくりに取り組んでいます。
例えばベトナムでは、連結子会社であるアンジメックス・キトク有限会社が現地で契約栽培したジャポニカ米を乾燥・籾摺り工場で玄米にし、日本式の精米工場で精米する一気通貫の生産体制を整備しており、ベトナム国内での販売の他に東南アジアや欧米への三国貿易でも販路を広げています。中国では吉林省や遼寧省など東北部で栽培されているジャポニカ米の販路開拓を進め、連結子会社の木徳(大連)貿易有限公司を拠点に、中国最大の国営食糧企業である中糧集団有限公司(COFCO)と協力し、日本の大手コンビニエンスストアチェーンと連携しながら中国国内での販売地域を拡大しています。そしてタイでは、日本人観光客や駐在する日本人が多く、高級レストラン等で美味しい日本米へのニーズが高まっていますので、キトク・タイランド会社を拠点にタイ国内で日本米を流通させる施策に注力しています。
さらに今後の取り組みとして、当社グループが国内で導入した無洗米加工方式「UMBP(ウルトラマイクロバブルプロセス)」のベトナム等への導入を検討しています。UMBPは生産工程での化石燃料使用量削減や節水効果といった環境負荷とコストの低減だけでなく、超微小な泡が米ぬかをしっかり除去して炊きあがりのご飯を美味しくします。また、炊飯に適さない硬水を使う海外においてはUMBPを導入することで、洗米の工程を省き軟水のミネラルウォーターで美味しく炊いていただくことも可能になります。こうした海外で美味しいコメを食べやすくする工夫も、日本米の普及につながると考えています。

Q. コメ関連事業の拡大に向けた取り組みを お聞かせください。

■鎌田 当社グループはお米の魅力をさまざまな形で普及させるべく商品開発を続けており、その成果の一つとして2023年12月には国産こめ油とカレンデュラを使用した無添加手づくり石鹸「八十八花」を発売しました。化学合成成分を使用しておらず、刺激を感じやすい方や小さなお子さまにもお使いいただける商品です。さらに2024年3月には米粉の一般家庭用商品3種類を発売しました。当社は新潟に米粉工場がありますので経営資源の有効活用になりますし、米食離れが進んでいる今、このようにお米の美味しさを違う形で楽しんでいただける商品も重要です。
そして以前から当社は非食用米粉を配合した包材の開発など、地球環境保護の貢献という視点でも商品開発に取り組んでいます。最近ではUMBP無洗米加工の副生水の肥料化に向けた研究なども進めていますので、今後も進捗を発信していく考えです。

 

■竹内 また、当社は2024年1月に100%出資子会社で鶏卵事業を展開するキトクフーズ株式会社を吸収合併しました。米穀事業と鶏卵事業のどちらも歴史と実績があり、双方の経営資源やノウハウを集約し有効活用することで、原料調達力や営業販売の強化といった効果が出ています。新商品開発においても更なるシナジー効果を期待しています。

Q. 株主へのメッセージをお願いします。

■竹内 企業にとって何よりも大切なことは社員に気持ちよく精一杯働いてもらうこと、その結果としてお客様、消費者に喜んでいただいて社会に貢献できる、株主に還元できると考えます。当社グループの持続的な成長に向けて社員のモチベーションとエンゲージメント向上が重要であり、若手社員を対象とする研修会や経営陣と社員が直接対話する交流会も実施しています。

 

■鎌田 海外事業においてはコロナ禍が収束し、ようやく海外拠点への訪問が復活しました。さらに2024年からはアンジメックス・キトクの幹部や社員が来日して岡山工場を見学し、UMBPについて学ぶなど、海外拠点と日本と双方が交流し研修する機会を積極的に設けています。木徳神糧は既に150周年を見据えた土台作りのためにさまざまな取り組みに着手しており、企業として停滞することなく動き続ける姿をステークホルダーの皆さまにしっかりと情報発信することが重要だと認識しています。


■竹内 当社グループは全国の学校やこども食堂にコメを寄付していますが、2023年には創業140周年を記念してグループ全役職員にコメを無償配布する「ありがとう米(まい)」キャンペーンも実施しました。
コメの大切さと魅力を国内外に伝えることは、コメ消費の拡大、コメ農家による生産の継続につながります。
世界的に穀物需給がひっ迫する環境下、食糧安全保障の観点からも主食であるコメを守ることは重要な社会的課題であり、木徳神糧の使命でもあります。引き続き国内外において米卸としての役割を果たし、企業価値を向上させ、株主の皆さまを含む全てのステークホルダーの皆さまに還元してまいります。
 

2024年3月