環境変化にも本質を見失わず
中長期的な視点で
戦略を実行してまいります。

木徳神糧 代表取締役社長 鎌田慶彦

代表取締役社長 鎌田 慶彦

Q. 2026年12月期上半期の概況を教えてください。

業績推移グラフ(2024年~2026年)

 当社グループの主力である米穀事業においては激しい環境変化が続きました。令和6年産を中心とする需給の逼迫は、政府備蓄米の放出などにより一定の落ち着きを見せました。一方、令和7年産まで高い米価水準が続いたことでコメの消費が抑制され、国産米の需要が減少しました。2026年6月末の国内のコメの民間在庫は前年同期比で約88万トン増加し、上期は一転して在庫過剰となりました。量販店などでは在庫消化を優先した価格競争が激化し、当社も価格対応に伴う粗利率の低下により、米穀事業は大幅な減益となりました。
 当上半期は収益性が低下しましたが、厳しい事業環境のなかでも一定の利益水準を確保することができました。飼料事業・鶏卵事業が増収増益となり、全社業績を下支えしました。また、米穀事業の海外分野では、MA(ミニマム・アクセス)米や日本産米輸出が収益に寄与しました。環境激変の影響は、下期にも続くと見込んでいます。市況変動に左右されにくい収益構造への転換を図るため、中期経営計画を着実に実行してまいります。

Q. 国内における中期経営計画の進捗を教えてください。

 当社グループは現中期経営計画の中核戦略として、「調達力の確保」「コメの消費拡大」「コメ関連事業の規模拡大」に取り組んでいます。

 調達力の確保は、当社グループの使命であるコメの安定調達・安定供給を実現するうえで不可欠です。単に相場の変動に対応するのではなく、生産者から消費者までをつなぐ需給の橋渡しを担い、安定的かつ持続的に機能するサプライチェーンの構築を目指しています。そのため、需給環境に応じた機動的な調達・在庫管理を徹底し、中長期的には生産者との信頼関係を強化し、安定的な調達基盤の構築を進めています。また、全農に加え、JAや生産法人との直接的な関係構築も強化しています。その一環として、当社が作付けを推進している高温耐性多収品種「にじのきらめき」の種子を生産者に提供し、令和6年産では約1万6,900トンを調達しました。今後は2万トン以上に拡大していく方針です。また、銀行など異業種も参画する「次世代アグリビジネス協議会」に今年4月より参画しています。これらの取り組みを通じ、生産者の持続可能な稲作経営や次世代の食農産業を支える環境づくりに貢献してまいります。

 当社は株式会社神明との合弁で、日本精米センター株式会社(佐賀県)を設立し、九州エリアの精米工場を共同運営することで、生産性向上・省力化、高品質商品の安定供給を進めています。今後も共同出資やM&Aを視野に、他の卸売業者との連携を強化していきます。米穀業界全体のコスト競争力を高め、パンや麺などの競合食品に対してコメが選ばれる環境をつくり、コメ消費の拡大につなげていきたいと考えています。

 コメ関連事業では、鶏卵事業と飼料事業の売上高割合を高めるため、米穀事業との連携による営業拡大を推進し、飼料事業・鶏卵事業はいずれも増収増益となりました。特に鶏卵事業では“モノを売る営業”から“価値を提案する営業”への転換を図り、当社の鶏卵を使用した玉子サンドや、ご当地カレーとのタイアップによる鶏肉の販売など、提案型の企画・商品開発を行い、売上高の拡大につなげています。さらに、精米工場由来の洗米副生水(高濃度とぎ汁)や米ぬかなど未利用資源の活用にも取り組んでいます。肥料メーカーと共同開発した肥料「UMBP*ヌカボカシー」については、農作物の生育効果などの実証実験を開始しました。こうした商品開発は、事業領域の拡大に加え、循環型農業や食料自給率の向上にも貢献すると期待しています。

 

* UMBP(ウルトラマイクロバブルプロセス):超微小な泡で米ぬかを除去する無洗米加工の方式。生産工程での化石燃料使用量や水の使用量を抑え、環境負荷やコストの低減に寄与します。また、硬水が多い海外でも、軟水のミネラルウォーター等で簡単においしいご飯を炊くことができます。

Q. 海外における中期経営計画の進捗を教えてください。

 海外では、日本米やジャポニカ米のニーズが高まるなか、ベトナム、中国、タイの現地法人を活用し、輸出・現地販売・三国間取引の拡大に取り組んでいます。

 アンジメックス・キトク社では、メコン川流域の稲作地帯でジャポニカ米の生産・加工・販売を行っています。工場にはUMBP*を導入し、ベトナム国内および第三国への販路拡大を進めています。タイでは、業務用を中心に日本米の販売マーケットが広がりつつあり、日本国内の産地からタイへの輸出を拡大しています。中国では、同国最大の国営食糧企業である中糧集団有限公司(COFCO)と協力するとともに、中国経済の先行きに不透明感がある環境下でも、大手コンビニエンスストア向けを含めた業務用を中心に堅調な売上を維持しています。今後は海外現地法人との連携を通じ、近年輸出需要が高まっている欧州に加え、中東への販路拡大にも取り組んでまいります。

 一方、米国では現地法人「キトク・アメリカ」を通じ、カリフォルニア州最大級の生産者と契約を結び、高品質な米国産米をSBS(売買同時契約)方式で輸入しています。また、MA(ミニマム・アクセス)米の取扱数量も拡大しています。さらに、タイ産香り米(ジャスミンライス)やパキスタン産のバスマティライスなど、多様な品種のコメを日本に輸入し、消費者の多様なニーズにも応えていきます。

 このように当社グループでは、日本からの輸出、海外現地法人を通じた三国間貿易、海外からの輸入をバランスよく組み合わせながら、2026年12月期の海外販売数量3万4,500トンを目標とし、2028年12月期には5万トンへの拡大を目指しています。

Q. ステークホルダーへのメッセージをお願いします。

配当金推移グラフ(2024年~2026年)

 さらなる企業価値の向上に向け、組織体制の見直しも含め、さまざまな取り組みを進めています。開発事業部を新設したことで、例えばECサイトの活用の幅を広げ、コメに加えて地域の特産果物を期間限定で販売するなど、新たな企画も生まれています。こうした取り組みは、新たな収益機会の創出だけでなく、産地の農協との関係強化にも寄与すると考えています。

 また、総務室には人事チームを新設し、人的資本経営の充実に向け、採用や社員の定着に関する取り組みを強化しています。さらに、当社初の試みとして、今年5月から年内にかけて、会長と私が本社・支店・工場を巡り、延べ19カ所でタウンホールミーティングを開催しています。会社の発展には経営層と社員がしっかりと対話をすることが肝心です。ミーティングでは、経営陣から企業理念や中期経営計画を説明するとともに、社員一人ひとりから、日頃感じている課題やその解決案、会社への要望などを発表してもらっています。社員自身が会社や仕事について考える機会にもなっています。こうして寄せられた社員の声には総務室に専任者を置き、具体的な改革につなげています。上期には外部機関によるエンゲージメントサーベイも実施しました。人的資本経営を単独のテーマとせず、事業戦略やDXと一体で推進することが重要だと考えています。

 このように、人材・組織基盤の強化と成長投資を着実に進め、財務健全性とのバランスを踏まえ、継続的かつ安定的な株主還元にも努めてまいります。

 厳しい経営環境が続きますが、木徳神糧が将来に向けて役職員一丸となって邁進することに変わりはありません。皆さまには引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2026年9月