需給環境が大きく変化するなか、役職員一丸となり米穀卸として進化を続けてまいります。

代表取締役社長 |
鎌田 慶彦 |
当期は猛暑等の影響で令和5年産米の収量が減少し、精米歩留りの悪化もあり供給量が減少しました。一方、インバウンドの増加や食品全般の値上げに対するコメの割安感、南海トラフ地震の臨時情報や米不足報道が重なったことが消費者の買い溜めを促し、「令和の米騒動」と言われる事態となりました。こうしたなか、当社は安定調達を最優先に、機動的な調達を推進し、原料価格の高騰に対応しながらお取引先への供給責任を果たし、適時適切な価格転嫁を進めた結果、上場来過去最高益を計上することができました。
需給環境が大きく変化するなか、米穀卸である当社の存在意義は、持続的に生産と消費を結びつけ、安定調達・安定供給を実現することに他なりません。当社グループは中期3カ年経営計画(2023年12月期〜2025年12月期)のもと、安定的かつ機動的な調達の両立に向けて全農との協力体制を強化し、事業連携や資本参加等による米穀事業グループの拡大を推進してまいりました。米穀の流通量が減少し価格や需給が乱れているこの状況において、課題は仕入基盤の安定化であり、調達先との協力体制の更なる強化・拡大が重要さを増しております。高温耐性を持つ多収穫品種「にじのきらめき」等の契約栽培を生産者に働きかけるなど、さらに調達ルートを複線化しつつ、輸送と保管の効率化等を図り、コストダウンと品質向上に努めます。生産農家の高齢化や離農の加速が懸念されるなか、生産者が持続的に再生産できる適切な価格であることが重要です。当社は、こうした状況を丁寧に説明し、お取引先の理解を得ながら価格を維持することを、重要な役割と認識しています。
連結子会社であるベトナムのアンジメックス·キトク、中国の木徳(大連)貿易、タイのキトク・タイランドの3社は、いずれも計画を上回る好調な業績を維持しています。また、現地で栽培されるジャポニカ米の販路拡大に向けた仕組みづくりの一環として、2024年には海外拠点で初めてアンジメックス·キトクに、国内で導入している無洗米加工方式「UMBP(ウルトラマイクロバブルプロセス)」設備を導入しました。UMBPは超微小な泡で米ぬかを除去し無洗米化するため、炊飯に適さない硬水が多い海外でも、軟水のミネラルウォーターで簡単にご飯を美味しく炊けるメリットがあります。今後はベトナム以外の国への導入も視野に、UMBPの無洗米を活用した海外ではなじみが薄い無洗米の本格販売と市場の確立に努めてまいります。
日本国内では日本米不足となる一方で、シンガポールなどの東南アジアや欧州、北米でのジャポニカ米需要が増えています。こうした状況下で海外事業部が、各国でのアライアンスを活用してグループを牽引し、海外におけるジャポニカ米需要に応えるとともに、国内ではインバウンドや外国人居住者の増加、そしてエスニック料理の流行を踏まえ、タイ香り米やバスマティライス等、特徴のある外国産米の輸入を拡大し、日本の皆さまへ食のバリエーションや楽しみ方を提案しています。
2024年12月期には「事業領域の拡大」をテーマに掲げ、米穀事業、鶏卵事業、飼料事業の連携を強化し、調達・販売の拡大に取り組みました。その成果として、鶏卵事業では調達ルートの複線化を進め、既存顧客との取引が拡大し、利益率も向上しました。また、各事業部門が連携してコメからの副産物等を活用した新しい循環型ビジネスも模索しており、UMBP加工で発生する米のとぎ汁を利用した肥料づくりに岩手県で取り組み始めています。米価が高騰するなか、将来的に飼料用米の確保が厳しくなることも予想されるため、肥料を始め新たな分野へ商材を広げていくことも重要です。各事業部門が連携することでサステナブルな社会への貢献につながるビジネスの創造に期待しています。
また、当社はコメを原料とする商品開発を進めており、2023年12月には国産こめ油を原料とする「八十八花(はちじゅうはちか)石けん」、2024年4月には家庭用向けの米粉ミックス粉商品やたんぱく質調整「白かりんとう」を発売しました。2024年12月にはABCクッキングスタジオ様開催のクリスマスイベントに参加し、米粉ミックス粉商品をレシピと合わせて紹介するなど、販売促進活動を通じて消費者への認知度向上を図っています。
新規事業開発・新商品開発の動きを加速化するために、2024年12月から「ひとつぶのヒラメキ」という、全社員からビジネスアイデアを募集する企画を始めました。多くの応募があり、私から一つひとつにコメントを返すなかで、社員とのコミュニケーションの活性化やエンゲージメント向上の効果も感じています。さらに、新たな社内プロジェクト「チームトライアル」も立ち上がり、若手を中心に選抜された社員9名が3チームに分かれて新規ビジネスを企画し、2025年秋を目途に経営陣の前で事業計画を発表する予定です。実現性の有無は重要ですが、若手社員が事業計画の立案や組織運営等を経験する機会を通して、次世代のリーダー育成につなげたいと考えています。
全てのステークホルダーのご支援により、上場来過去最高益を達成することができました。心より感謝を申し上げます。
中期3カ年経営計画では、重要な方針の一つとして「企業成長の土台作り」を掲げています。企業の最も重要な基盤は「人材」です。社員が働きやすく、成長できる環境づくりを目指し、会社としてできることを一つずつ実践し、継続的にアップデートしてまいります。そのためには、教育制度の充実や社員一人ひとりが“自分が動くことで木徳神糧が変わる”と感じられる雰囲気づくりも重要です。今の木徳神糧はまさに転換期にあります。私は社内の年頭挨拶で今年のテーマは“わくわくドキドキ”だと伝えました。社員には楽しみながら新しい価値の創造に取り組んで欲しい、そして社員のチャレンジを経営陣がしっかりと評価していくことが重要だと考えています。当社は以前から社会貢献活動として学校給食や全国のこども食堂へのお米の寄付を実施していますが、2024年10月にはこども食堂支援寄付付き商品「岡山米にじの架け橋」を発売しました。これは支店にいる社員の発案ですが、今後さらに社員主導の動きが活発化することを期待しています。
当社は今後も、お取引先との信頼関係を更に強固にしながら、安定調達・供給の実現を通じて社会的役割を果たし、株主の皆さまに還元していくことを目指します。この循環を続けるために、木徳神糧の企業理念を全てのステークホルダーにしっかりと伝えていくことも社長の役割であると認識しています。皆さまには引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年3月