当社グループが培ってきた
歴史を基盤に
更なる成長に向けて
事業領域を拡大します。

代表取締役社長執行役員

鎌田 慶彦

Q. 2024年12月期上半期の概況と国内での取り組みをお聞かせください。

 A. 重要施策としてコメの調達に取り組み、成果を挙げています。

 当上半期においては令和5年産米の取引価格上昇と家庭用需要の回復等を背景に増収となる一方で、米穀調達価格の大幅な上昇や、昨年夏の猛暑を要因とした令和5年産米の品質低下による精米歩留まりの悪化等により減益となりました。国内では一部の店舗で店頭からコメが消える等、コメ不足が報道されている状況ですが、当社グループは中期3ヵ年計画(2023年〜2025年)のもと、主力の米穀事業において安定的な調達と機動的な調達の両立に向けて全農との協力体制の強化と仕入ルートの複線化を進めており、既存のお客様を最優先に納入に全力を注いでいます。

 コメの安定調達は米穀事業の基本であり、引き続き重要なテーマです。今後も夏の猛暑が継続すると予測されるなか、当社グループは調達先との協力体制を強化・拡大しつつ、高温耐性を持つ多収穫品種「にじのきらめき」の栽培拡大も推進しています。「にじのきらめき」は全国の広いエリアで生産可能で、2024年12月期には前年比約1.5倍の集荷量を目指しています。
 コメの市場環境は近年大きく変化しました。従来のようにコメが十分にあるなかでは大量調達によるスケールメリットで価格競争する形でしたが、今はコストをかけて安定した調達量を確保することが重要になっています。肥料などの農業資材の高騰による厳しい経営環境下で離農を考える生産農家も多く、当社の安定供給に必要な量を確保するためのコストは上昇しています。適切な調達コストについてお客様にご理解いただきながら安定的にコメを調達するとともに、価格の上昇分が生産者に適切に還元され、持続的に再生産できるようなコスト体系をつくり上げることが特に重要であり、米卸である当社グループの役割でもあると認識しています。

Q. 海外事業の状況を教えてください。

 A. 連結子会社が順調に日本米の販路を拡大しています。

 連結子会社であるベトナムのアンジメックス・キトク、中国の木徳(大連)貿易、タイのキトク・タイランドの3社は、上半期の業績が計画値を上回るなど好調に推移しています。近年はシンガポールなどの東南アジアや欧州への輸出需要が増えている日本米に代表されるジャポニカ米の販路拡大に向けた仕組みづくりに取り組んでいます。その一環として、国内で導入している無洗米加工方式「UMBP( ウルトラマイクロバブルプロセス)」をベトナムに導入することを計画しています。この方式は生産工程での化石燃料使用量削減や節水効果など環境負荷やコストの低減だけでなく、超微小な泡が米ぬかをしっかり除去し無洗米化するため、炊飯に適さない硬水が多い海外でも、軟水のミネラルウォーターで無洗米のご飯を炊くことで、ジャポニカ米の本来の美味しさを知っていただくきっかけにもなります。まずはベトナムからですが、いずれ戦略市場である中国への導入も視野に入れており、海外での展開を進めていきたいと考えています。

 また、当社がパキスタンから輸入する長粒米のバスマティライスは、家庭用向けの小容量商品もラインナップし、全国展開する有名輸入食品店で取り扱っていただいています。当社がこれまで長年かけて日本の皆さまにご紹介してきたタイの香り米のようにバスマティライスも積極的に提案し、エスニック料理の食材として定着を図ってまいります。

Q. 新たなコメ関連ビジネスへの取り組み状況を教えてください。

 A. 事業間の協働が新商品・ビジネスにつながっています。

 主力の米穀事業を国内外でしっかりと展開する一方で、事業領域を広げるべく新商品開発に取り組んでいます。2023年12月には国産こめ油を原料とする「八十八花(はちじゅうはちか)石けん」、2024年4月には家庭用向けの米粉商品や、腎臓病患者向けに開発した「たんぱく質調整白かりんとう」を発売しました。非常に良質な商品とのご評価をいただいており、さらに認知度を高めるべくマーケティング活動や広告・宣伝に取り組んでいきます。

 このように相次いで新商品を発売していますが、私自身が一番の成果と感じているのは、社内の連携が着実に深まり、具体的な動きに結び付いてきたことです。異なる事業が互いの活動や商材に興味を持って自分たちの事業との連携や新たなビジネスを考える、さらに今はアイデアを具体的に話し合う動きが活発化しており、そうした社内の変化が新商品の発売につながっています。新商品開発においては多くの部門が協力して試食会を開催し、既存事業においても米穀事業と鶏卵事業が連携してコメと卵の販売チャネルを広げるなど、自然な協力関係ができつつあると感じています。重要なことは、当社グループの経営資源(仕入れルート、販売チャネル、事業ノウハウや人材)を改めてしっかりと見直し、既存の価値を掛け算していくことで今までにない新しい価値を創造する、それが事業領域の拡大につながると考えています。

Q. ステークホルダーへのメッセージをお願いします。

 A. 従業員の成長を促し、更なる成長を目指します。

 社長就任以来、先達が積み重ねてきた143年の歴史と株主をはじめとする多くのステークホルダーの皆さまからの信頼の重みを改めて感じるとともに、使命感を強く抱いています。事業活動に加え、近年、当社グループが取り組む学校給食やこども食堂へのお米の寄付、将来の担い手への研修対応など、社会貢献活動についても継続すべく体制を強化してまいります。

 また、私は社長に就任してから、“チーム友達”という心構えで従業員と接しています。当社従業員が誠実さと真面目さを保ちながら、グループや事業の垣根を越え同じチームとして自由闊達に意見を交わして一つの方向に進んでいける会社づくりを目指しています。従業員への譲渡制限付株式報酬制度の導入や人材育成方針・社内環境整備方針の策定も、従業員に会社の成長を自分事として考えてもらい、会社の方針を理解してもらうためでもあります。一方で、私たち経営サイドが従業員の意見に耳を傾け、従業員が安心して働ける、特にこれまで以上に若い従業員がチャンスを見出せる環境整備にもさらに取り組んでまいります。世代交代を含む新陳代謝を進めながら、更なる木徳神糧の成長に向けて邁進いたします。株主の皆さまには、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2024年9月